音のない一葉
カナリアの涙
カナリア 翼をもぎとられても歌う
こわれたガラスがちらばる世界を
二人は翼をなぐさめあって痛い
静かに傷口を重ねて 世界は
闇のような雨 空をおおう雨
残された小さな部屋で花は枯れて行く
カナリア どうして淋しい声で歌う
おまえの宿り木がなくて悲しいの?
瞳は行き場を捜し求めて泣いた
氷雨は棘になり背中をつかんだ
髪をほどいた 細い指先
盗み見て ただそれだけで永遠になった
ねぇ あたたかい 脈うつ鼓動は
身体のおくに溶け込んで やがて消える
泣かないで 心がちぎれそう
涙で顔をかくすキミを 強く抱いた
カナリア 手足が動かなくても歌う
こわれた喉から声が消えるまで
キミが見えない 闇になればいい
残された世界に何が? ――何の意味もない
ねぇ 止まらなく 脈うつ鼓動は
どれだけ強く重ねても やがて消える
空遠く浮かべた淋しさは
強く抱きあう恋人の夢も儚く
あたたかい 脈うつ鼓動は
身体のおくに溶け込んで ひとつになれ
泣かないで これ以上 二人は
砂になるまで 消えるまで
カナリア どうしてかなしい色で歌う
――誰にも伝えることばがないから?
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