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       音のない一葉
Anne of the Island

『輝きの湖』も『恋人の抜け道』も…
セピア色に押しやられてしまう
シャーリーはダイアナと
緑の風に愛されながら生きてきたんだ。

林の入り口で控えめなリンゴの木が
空高く背をのばそうとしてる
太陽を吸い込んで
ひかりのなかでほほえみながら赤い実になる

メルセデスの店の前でダンボールにくるまって
映るのは銀座の曇り空
ビルに切り取られて 絶望みたいな匂いしかない

くしゃくしゃになったタバコをくわえて
ひたすらにすいこむ まるで世界の終わりみたいに
ねぇシャーリー、きっと残されたものなんて
ごくわずかしかない 切ない想いとか純粋とか
抱えてるだけでは食べてゆけないらしい

でもね、抱えて生きて行く

朽ち果てた世界の涯てで君の唇にふれて
放射線の風に包まれる
このまま崩れたって 君と二人なら恐くない たぶん

明日くる不安に心うばわれて
今日の楽しさとか見失っては絶対にいけない
ねぇシャーリー、君は教えてくれた
壊れそうな指先 道端の花を愛でながら
大切なものが何か君は教えてくれた

君は とても優しかった

『輝きの湖』も『恋人の抜け道』も…
セピア色に押しやられてしまう
大好きなシャーリーは唇をとがらせて
青い空を抱きしめていた。





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