月読
金魚
言葉
それは傷つけてしまうもの
たったひとかけらの切れ端でさえ
心に深い痕をのこしてしまうもの
言葉
それは嘘を包むオブラート
知られてほしくない私の弱点を
ごまかすために飾られた装飾品
あなたを傷つけて
あなたに嘘をついて
それで私は成り立っている
まわりに棘を振り回して
まわりから私を遮断するために
私は私を言葉で包み込む
でもそれは
でもそれは 怖い
傷つけたり嘘をついたりした人たちの瞳を見ると
自分が醜くなったようで怖くて
私は言葉がつむげなくなる
真実を覆い隠すということと
私自身の弱さを遠ざけるということで
弱さから逃げている私を見つめることができないことが怖い
言葉は私自身を傷つけている
それは たとえれば
金魚鉢のなかで泳ぐだけの金魚でしかないんだ
外を知らないで
安全な水槽の中で一生を終える
一人ぼっちの金魚でしかないんだ
私をごまかして
私自身に目をそむけて
それで私は成り立っている
まわりにナイフを振りかざして
まわりから私を遠ざけながら
自分のくだらない世界を必死に守っている
でも言葉は
あなたを傷つけてしまうだけじゃない
あなたの顔に微笑みをあげる水にもなる
あなたを暖める毛布にもなる
あなたが私を包んでくれる言葉
私があなたを喜ばせる言葉
時には傷つけてしまったり
嘘をついてしまったりする言葉
だけど あなたはそれでもいいと言う
それでいいと言う
金魚鉢を割って
海へ出てゆこう
傷つけられたり 傷つけたり
嘘をついたり 嘘をつかれたり
きっと そういう言葉が散らばってるけど
たぶん大丈夫 たぶんやってゆける
私を包んでくれる言葉があることを
自分をごまかさないでいられる言葉を持てることを
あなたを
信じて
海へ出てゆく
大丈夫。
きっと
泳いでゆける。
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