音のない一葉
ジャン
コクトーが指先でなぞるキレイな絵に
あこがれながら触れられない
世界の屑からこぼれおちたBaby そのひとみで
ゴダールの切り取ったとても美しい映像
音と映像 それだけの世界
まぶたのうらまでからみついたBaby この気持ちを
ベルモントのくわえる苦い紫煙とともに
風に流しながら微笑んだ
コロナを肩先でかるく着こなしながら
服に着られる姿に気づく
わずかの未来も見出せないBaby それでもいい
ゴルチェの繊細が描くあの気だるさを
身に纏って歩いている
今を生き長らえることがBaby 生きがいだって
ユーゴーは はにかみながらつぶやいて
僕は悲しくなってピアノをたたく
世界はゆるやかに傾いていたりして
子供の頃はもっとそれに気が付いていたはずだけど
いつしかそれさえも忘れてしまって
それでもいいかなんて軽く考えてしまったんだね
サルトルの哲学なんかで騙されはしない
風はつめたく心を凍らせて
存在意義さえ失くしかけたBaby この気持ちで
最低の二十代を過ごすんだって
君は悲しそうに僕を見ていた
世界はゆるやかに傾いていたりして
もう誰にもきっとそれは止めらなくなったりしている
密かに育んだ恋心とかさえ
つめたいうねりの中で押しつぶされてしまってゆく
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