月読
木洩れ陽のそそぐ坂道
ずっと小さな頃 母親の腕に抱かれて 枝と枝の下をそっと通りぬけながら
世界を知らなかった 幼い私は見ていた それはとても綺麗な 木洩れ陽のそそぐ坂道
あとどれほど この並木道を通りぬけて行けば
振り返らずにまっすぐ前を見て 歩いて行けるのかな
優しい日差しが舞い降りる 歩きなれた道に
いくつ足跡を残して行けばいいのかな
時がたてば苦しかったことも静かにうすれて
新しいドアノブをにぎるのにためらわなくなるかもしれない
でもそれと同時に 良いことも 涙を流したことも
忘れてしまうとしたら それは悲しい
誰もが支えるものを見つけられないでいる
誰もが本当は不安でたまらない
誰かが「あの頃に戻りたいよ」って泣いてる
ずっと小さな頃 母親の腕に抱かれて 枝と枝の下をそっと通りぬけながら
世界を知らなかった 幼い私は見ていた それはとても綺麗な 木洩れ陽のそそぐ坂道
枝と枝の間に広がる遠い空の青さは まるで真冬の受験生のようなさびしさで
世界にとりのこされたような孤独な色をした 深い青をしていた
なつかしい青をしていた
人々はそれぞれの抱く鮮やかな花を 胸の奥に咲かせている
時の移ろうはかなさを 自分に重ねては 少しだけうつむきながら
はにかみながら 必死に育てている
誰もが支えるものを見つけられないでいる
誰もが本当は淋しくてたまらない
誰かに伝えたかった言葉がまだくすぶってる
どうしていつの間にか あらがう術もなくして 自由になるための 武器を捨ててしまうのだろう
枝と枝の間へとそそぐ木洩れ陽のなかで 何か多くの宝を置き去りにしてきた気持ちになる
ずっと小さな頃 母親の腕に抱かれて 枝と枝の下をそっと通りぬけながら
世界を知らなかった 幼い私は見ていた それはとても綺麗な 木洩れ陽のそそぐ坂道
やさしい坂道
教えてください
どこへ行こうとしてるの たったひとりきりで ゆくあてもなく
影が細い声で 泣き声をあげています
ずっと小さな頃 母親の腕に抱かれて 枝と枝の下をそっと通りぬけながら
世界を知らなかった 幼い私は見ていた それはとても綺麗な 木洩れ陽のそそぐ坂道
枝と枝の間に広がる遠い空の青さは まるで真冬の受験生のようなさびしさで
世界にとりのこされたような孤独な色をした 深い青をしていた
なつかしい青をしていた
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